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更年期の漢方と鍼灸 ― 鍼灸師の尼僧が自分の体で試してきた話

目次

はじめに ― いま、更年期のただ中にいる私から

ほてり、だるさ、気分の波、眠りの浅さ。 更年期の症状は本当に人それぞれで、「これさえやれば大丈夫」という正解はありません。

でも、東洋医学には、このゆらぎを読み解く確かなものさしがあります。そして私自身、鍼灸師として漢方とツボに、ずいぶん助けられてきました。

この記事では、更年期の漢方の選び方と、更年期に鍼灸ができることを、東洋医学の視点から整理してお伝えします。同じ季節を歩いているあなたの、手当ての入り口になればうれしいです。

東洋医学からみる更年期 ― 女性の体は「7の倍数」で巡る

東洋医学の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』には、女性の体は7年周期で変化すると書かれています。

7歳で歯が生えかわり、14歳で月経が始まり、28歳で体が最も充実し、35歳から少しずつ衰えはじめ――そして49歳(七七)で「天癸(てんき)尽きる」、つまり閉経を迎える、と。

二千年以上前の書物が、現代とほぼ変わらない数字を記していることに、私はいつも驚かされます。

大切なのは、古典がこれを「病」として書いていないこと。 月の満ち欠けのように、体が次の段階へ移っていく自然な転換として描いているのです。

ただ、転換期には気・血・水のバランスが大きく揺れます。その揺れ方が、人によって違う。だから更年期の漢方は、「更年期だからこの薬」ではなく、その人の揺れ方(証)に合わせて選ぶのです。ここが、何よりの土台になります。

更年期の症状は4タイプ ― あなたの「揺れ方」はどれ?

更年期の揺れ方を、東洋医学では大きく4つに分けて考えます。ご自分がどれに近いか、確かめてみてください。

①水が滞るタイプ(水滞)+気が足りないタイプ(気虚) 体が重い、むくむ、汗をかきやすい、疲れやすい、膝がつらい。

②血が滞るタイプ(瘀血・おけつ) ほてりやのぼせが強い、肩こり、頭痛、月経トラブル、肌トラブル(特に大人ニキビ)、舌の裏の血管が紫っぽい。

③血が足りない+水が滞るタイプ(血虚+水滞) 冷え、めまい、立ちくらみ、貧血ぎみ、むくみ、疲れやすい。

④気が滞るタイプ(肝鬱・かんうつ) イライラ、不安、ため息が増える、症状が日によってころころ変わる、のどのつかえ感。

複数のタイプが重なる方も多いですし、時期によって変わっていくのも自然なことです。

更年期によく使われる漢方 ― タイプ別の選び方

それぞれのタイプに、よく用いられる代表的な処方があります。自分の体がいまどの状態にあるのかを見極めることが、漢方選びの要です。

①水滞・気虚タイプに:防已黄耆湯

**防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)**は、水太りぎみで汗をかきやすく、体が重く、膝にきやすい体質の味方です。水分代謝を助けながら「気」を補ってくれるので、梅雨どきの重だるさにも頼りになります。

③血虚・水滞タイプに:当帰芍薬散

**当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)**は、血を補い、巡らせ、余分な水をさばく――「補血・活血・利水」を一手に引き受けてくれる、女性の体の定番処方です。冷えやめまい、ふらつきがある方に向きます。

②瘀血タイプに:桂枝茯苓丸

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、瘀血(血の滞り)をさばく代表処方です。ほてり・のぼせが強く、肩こりや顎まわりの大人ニキビが出やすい方に向きます。

ここで覚えておきたいのが、**当帰芍薬散と桂枝茯苓丸は、向く体質がほとんど「逆」**だということ。冷えて血が足りない人には当帰芍薬散、ほてって血が滞る人には桂枝茯苓丸。同じ「婦人科の漢方」でも、選ぶべき薬は正反対に近いのです。

④肝鬱タイプに:加味逍遙散

**加味逍遙散(かみしょうようさん)**は、気の滞りが強い方の処方。イライラして家族にあたってしまう、わけもなく不安になる、症状が日替わりで現れる――そんな「心のゆらぎ」が前に出ている方に向くとされます。

「逍遙(しょうよう)」とは、ゆったりと散歩するという意味。滞った気をゆるめて、心をそぞろ歩きさせてあげる。名前からして、なんともやさしいお薬ですね。

※漢方は必ず体質(証)に合わせて。自己判断で長く続ける前に、漢方に詳しい医師や薬剤師さんにご相談ください。合わない処方は、効かないだけでなく体に負担になることもあります。

鍼灸師として ― 更年期の不調と鍼灸、そして美顔鍼

更年期の不調に、鍼灸が選択肢になることは、あまり知られていません。ほてりやのぼせ、寝つきの悪さ、気分の波――こうした症状の多くは、自律神経の揺らぎと関わります。鍼灸は、その自律神経のバランスをやさしく整えるのが得意分野。薬に頼りきりたくない方、漢方とあわせて体を底上げしたい方にとって、更年期の鍼灸は穏やかな味方になります。

美顔鍼は、大人ニキビにもよく効く

鍼灸師としてひとつお伝えしたいのが、美顔鍼(びがんしん)は大人ニキビにとてもよく効くということ。

美顔鍼というと「リフトアップ」「美容」のイメージが強いのですが、本来の働きは、顔の血流を促し、滞りをさばくこと。まさに瘀血によるニキビにぴったりなのです。ごく細い鍼の刺激で肌の血の巡りがよくなり、ターンオーバーが整っていきます。顎まわりの頑固なニキビでお悩みの方は、漢方とあわせて、信頼できる鍼灸院で相談してみる価値は十分にあります。

おうちでできるツボ押し:三陰交・合谷

おうちでのケアなら、ニキビそのものには触れず、巡りを助けるツボをやさしく押すのがおすすめです。

  • 三陰交(さんいんこう)…女性の体の万能ツボ。内くるぶしから指四本分上、すねの骨のきわにあります。
  • 合谷(ごうこく)…手の甲、親指と人差し指の骨が合わさるくぼみ。気の巡りを助けます。

どちらも、痛気持ちいいくらいの強さで、ゆっくり押してみてください。

仏教の眼差し ― 衰えではなく、熟していく

更年期という言葉には、どこか「衰え」「失っていく」という響きがつきまといます。でも、本当にそうでしょうか。

仏教は「諸行無常」――すべては移ろいゆく、と説きます。 それは「だからむなしい」という話ではありません。移ろうからこそ、いまこの瞬間の体は、二度とない尊い姿だということです。

ゆらぎの季節は、熟していく季節。 果実が熟すように、お茶がゆっくり開くように。そう思って自分の体に手を当てると、ほてりも、だるさも、少しいとおしく感じられてくるのです。

おわりに ― あなたのゆらぎに、合う手当てを

更年期の漢方に、正解はひとつではありません。

水をさばく防已黄耆湯。血を養う当帰芍薬散。滞りを流す桂枝茯苓丸。気をゆるめる加味逍遙散。 そして、手のひらの温もりと、ツボと、鍼。

大切なのは、いまの自分のゆらぎ方を知り、それに合う手当てを選ぶこと。 あなたのゆらぎの季節が、やわらかく実っていきますように。

合掌


この記事には、続きがあります。

ここでご紹介した4つの漢方を、私は更年期のただ中で、自分の体に試してきました。 なかでも――顎にびっしりできたニキビが教えてくれた「血の滞り」のサイン、当帰芍薬散と桂枝茯苓丸という”逆の体質”の二つの薬を、自分の肌で行き来した日々のこと。そして仏門に身を置く者として、この「ゆらぎの季節」をどう受けとめているのか。

ひとりの人間の、ほんとうの漢方遍歴として、noteにすべて書きました。 👉 https://note.com/regal_clam3571/n/nc39e69c09cdd


この記事は私個人の体験と一般的な東洋医学の知識をご紹介するものであり、特定の医薬品の効果を保証するものではありません。漢方薬の服用は、医師・薬剤師にご相談のうえ、ご自身の体質に合わせてお選びください。症状が強い場合や長引く場合は、婦人科の受診をおすすめします。

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