MENU

金縛りの翌日、背中が鉛のように重い——東洋医学でひもとく「恐れ」と身体の話

金縛りそのものは、子どもの頃から経験している、という方は少なくありません。けれど、ときどき耳にするのです。「金縛りにあった翌日から、なぜか身体が重い」「背中の奥が痛んで、力が入らない」と。

僧侶として、また鍼灸師として多くの方の身体に触れてきた私は、その訴えを「気のせい」だとは思いません。むしろ、身体はとても正直に、その夜に起きたことを記録しています。今日はその仕組みを、東洋医学の言葉でお話ししたいと思います。

目次

私自身の、ある夜のこと

ずいぶん前のことになりますが、私はある夜、誰も住まない部屋で、ひと晩を過ごしたことがあります。

夜半に金縛りにあい、そして——闇のなかで、声を聞きました。低く、執拗に、同じ言葉だけを繰り返す声でした。

そのときに何があったのか、私がどう向き合ったのかは、ここでは詳しく書きません。けれど、翌日からの身体の変化は、今もはっきりと覚えています。背中が鉛のように重く、呼吸をするだけで痛む。買い物に出かけた先で、私はとうとう、売り場の途中で歩けなくなってしまったのです。

霊体験というと、目に見えない不思議な話に聞こえるかもしれません。けれど私の実感では、それはまず身体に現れます

「恐れは腎を傷る」——いのちの根が削られるとき

東洋医学には、こんな言葉があります。

恐れは腎(じん)を傷(やぶ)る

腎とは、単なる臓器のことではありません。東洋医学でいう腎は、生命力の根、いのちの灯火を蓄えておく場所です。成長や生殖、老化、そして「ここぞ」というときに踏ん張る力——その源が、腎に宿るとされます。

ところが、強い恐怖に長くさらされると、この腎の気は急速に削られていきます。腰から背中にかけての深い痛み、鉛のように重だるい感覚、足腰に力が入らない——これらは、腎の気が損なわれた身体が上げる、悲鳴のような信号なのです。

あの夜のあと、私の背中を襲った重さも、まさにこれでした。数時間にわたって恐怖と向き合い続けた私の腎は、確かに気を削られていたのだと思います。

言えない思いは、気を滞らせる——肝気鬱結

もうひとつ、東洋医学が大切にする視点があります。それは、心の状態が、そのまま気の巡りに現れるということです。

得体の知れないものを抱え込み、誰にも言えずにいる——そんな心は、気の流れを滞らせます。これを東洋医学では「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼びます。胸や背中がつかえ、締めつけられるような、あの感じです。

恐ろしい体験そのものだけでなく、「それを誰にも話せない」という孤独もまた、身体を硬くしていくのですね。

削られた気を、そっと取り戻すために

では、こうして消耗してしまった身体を、どう養生すればよいのでしょう。特別なことは要りません。日々の暮らしのなかで、腎をいたわる小さな習慣を積み重ねていくことです。

腰とお腹を、冷やさない。 腎は冷えを嫌います。腰のあたりを温かく保つだけでも、気は守られます。湯たんぽや腹巻き、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴も、よい養生になります。

黒い食材を、食卓に。 東洋医学では、黒い色の 食材が腎を補うとされます。黒豆、黒ごま、ひじき、わかめ。難しく考えず、いつもの食事に少し足してみてください。

深い呼吸で、気を巡らせる。 肝気の滞りには、ゆったりとした呼吸が効きます。ことに、吐く息を長く。背中の力がふっとゆるむ瞬間を、一日に何度か持てるとよいですね。

そして、無理に頑張りすぎない。 腎の気は、休息のなかで養われます。眠ること、何もしない時間を持つこと。それ自体が、いのちの根を満たす養生です。

身体は、嘘をつかない

お釈迦様は、この世のすべては因と縁によって生じると説かれました。

あの夜、あの部屋で、私が名前のないものと出会ったことにも、きっと縁があったのでしょう。恐ろしい出来事ではありましたが、今の私は、それを怖がらせるための怪談としてではなく、生きるための智慧として受け取り直しています。

身体は、嘘をつきません。あの夜、私が何と出会ったのかを、誰より正確に記録していたのは、私自身の背中でした。そして同じように、あなたの身体も、あなたが言葉にできない何かを、静かに抱えているのかもしれません。

その声に、どうか耳を澄ませてあげてください。


あの夜、闇のなかで聞いた声が何を言ったのか。私がどう向き合い、そして、削られた身体と心を、その後どのように取り戻していったのか——いちばん深いところは、note記事に綴りました。怖がらせるためではなく、同じように見えないものに苦しむ方へ、智慧として手渡せたらと願って書いた一編です。

▼「出てけ」と、その声は言った。——僧侶になる前の私が出会った、名前のないものの話 https://note.com/regal_clam3571/n/n04fbe3f18768?sub_rt=share_sb

今日も、あなたの心と身体が、穏やかでありますように。

合掌

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次