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夏至 ― 気が大きく動く日。あなたの中では、何が変わりはじめていますか

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はじめに ― 一年でいちばん昼が長い日に

まもなく夏至(げし)を迎えます。今年は6月21日。一年でいちばん昼が長く、夜が短い日です。

太陽の力がもっとも強まる日――そう聞くと、エネルギーに満ちあふれた華やかな日のように思えますね。

でも、東洋の知恵は、この日をもう少し深く、静かに見つめてきました。

夏至は、気が大きく変化するときなのです。

陽、極まりて、陰生ず

古来、東洋では「陰陽」のものさしで季節を見てきました。

冬至に、闇の底でひとすじの陽の気が生まれる――これを「一陽来復(いちようらいふく)」といいます。そこから陽はすこしずつ育ち、春を経て、夏至でいよいよ頂点に達します。

そして、ここからが大切なところ。

陽が極まったまさにその瞬間、今度はひとすじの陰の気が、静かに生まれるのです。

いちばん明るい日に、すでに秋冬への種が宿っている。 満ちた月が、その夜から欠けはじめるように。

ものごとは極まれば、必ず転じる。夏至とは、天地の気が大きく舵を切る、一年の折り返し点なのです。

変化のあらわれ方は、人それぞれ

気が大きく動くとき、私たちの心身もまた、その影響を受けます。

ただ、どんなふうに変化するかは、人それぞれの生き方や、置かれている環境によって違うと私は思っています。

  • 陽気に乗って、やる気がぐんと湧いてくる人
  • 逆に、気の切り替わりについていけず、急にだるさや眠気が出る人
  • 眠りが浅くなる人、夢が増える人
  • なんとなく心がざわざわして、落ち着かない人
  • 理由もなく、ふっと涙が出そうになる人

どれも「おかしなこと」ではありません。 大きな気の変わり目には、体質も、暮らし方も、抱えているものも違う一人ひとりが、それぞれの形で応えている。ただそれだけのことなのです。

だからこの時期は、人と比べないことがいちばんの養生になります。 「あの人は元気なのに、私はどうして」ではなく、「いま、私の気はこんなふうに動いているんだな」と、そっと観察してあげてください。

東洋医学からみる夏至 ―「心(しん)」の季節

東洋医学では、夏は五臓の「心(しん)」が主役の季節です。

心は血を巡らせるポンプであると同時に、精神活動――こころの働きそのものをつかさどるとされます。陽気が極まる夏至前後は、この心に熱がこもりやすく、

  • 動悸、ほてり、のぼせ
  • 寝つきの悪さ、眠りの浅さ
  • イライラ、そわそわ、集中力の低下

といったサインが出やすくなります。更年期世代の方は、もともとのほてりと重なって、いっそう揺らぎやすい時期でもありますね。

そこへ、日本の夏至は梅雨の真っただ中。前回お話しした「湿邪」も重なりますから、「熱はこもるのに、体は重だるい」という、なんともちぐはぐな状態になりやすいのです。

夏至の養生 ― 高ぶる気を、静める・降ろす

この時期の養生の合言葉は、「静める・降ろす」です。

1. 心を鎮めるツボ

手首の小指側、横じわの上にある「神門(しんもん)」。 手首の内側、横じわから指三本分ひじ寄りの「内関(ないかん)」。

どちらも高ぶった心をなだめ、眠りを助けてくれるツボです。夜、布団の中で、ゆっくり呼吸しながらやさしく押してみてください。

2. 苦味をひとさじ

夏の味は「苦味」。ゴーヤ、みょうが、緑茶、よもぎ。苦味は心の熱を冷ましてくれます。摂りすぎず、食卓にひと品、が目安です。

3. 昼のいちばん高い時間に、少しだけ目を閉じる

陽が極まる季節は、昼の小休みが効きます。15分ほど目を閉じるだけでも、心の熱がすっと引いていきます。

4. 冷たい物は、お腹と相談

暑く感じても、お腹が冷たい方は要注意。氷入りの飲み物をぐっと飲む前に、手のひらをお腹に当てて、お腹の声を聴いてみてください。

禅の眼差し ― 極まりの中の、静けさ

道元禅師は『正法眼蔵』の中で、薪は薪、灰は灰、それぞれがそのときの完結した姿である、と説かれました。春が夏「になる」のではなく、春は春として全き姿であり、夏は夏として全き姿である、と。

夏至もまた、「秋への通過点」ではありません。 陽の極まりと、陰のはじまりが同居する、それ自体で完結したひとつの「いま」。

そう思って迎えると、夏至の長い長い夕暮れが、すこし違って見えてきます。

なかなか沈まない太陽。 いつまでも明るい西の空。 そのくせ、足元にはもう、夜の涼しさがひたひたと満ちてくる。

極まりの中にすでに転換が宿っている――その気配を、肌で感じられる日なのです。

おわりに ― いちばん長い夕暮れを、味わう

最近は、季節のかたちが昔と違ってきたように感じます。夏至といっても梅雨空で、太陽を拝めない年も多いですね。

それでも、昼の長さだけは、暦のとおり。 曇っていても、雨でも、今日の光はいつもよりずっと長く、私たちのそばにいてくれます。

夏至の日の夕方、ほんの数分でかまいません。 窓辺でも、ベランダでも、傘の下でも。 暮れきらない空をながめながら、自分に聞いてみてください。

「いま、私の中では、何が変わりはじめているだろう」

その答えは、人それぞれ。 どんな答えでも、それがあなたの夏至です。

一年の折り返し点を、どうぞやわらかな心でお迎えください。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。 合掌


この記事は一般的な養生の知恵をご紹介するものです。強い症状や長引く不調がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。

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